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こ大ぶ

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こ大ぶ
四たんめ
さてもそのゝいあわれなるかな.しう/\四人の人々は.なみたと
共におち給ふむさんやな有しけは.むなしくなりてあるらん
と.なみたをみちのしるへにて.うすいかとうけにつき給ふ.やす
つなはかひ/\しくも.とある所の山かけに.しはのいほりを引む
すひ.みたひきむたちすみたまふ.むさんやなやすつなは.ひる
は人めをはゝかり.よるにもなれは.山ぢへゆきてたきゝを
こり.たにゝさかりて水をくみ.月日をおくりいたりしか.有
時に.やすつなは.みたい所にちかつき.いつがいつまで.付参せて
もかいもなし.まつ此たひは下野に下り.いかにも
ふりやくをめくらして.君を@うより出つゝ.御むかいに参る
へきと.なみたをなかし申ける.みたい所はきこしめし.おろか成
とよやすつなよ.なんぢはいゑのをとなして.みしらぬもの
(一オ)
もあるへきか.いましめられてあるならは.兄弟の物共を.たれかは
よにはいたすへし.たゝ/\とまれと有けれは.とも春殿は聞召
.はかなき母の御てうかな.よくいふたりややすつな.いかにもして
ちゝうへを.御よに出してくれよかし.やすつないかにと有けれは.かめわ
かは聞召.何やすつなは.ちゝこをむかいに参るかや.かさねては参る
共.かまひて國になかいすな.はやくかへれとのたまへは.むさんやな
やすつなは.是かわかれと思ひけれは.なみたにむせひいたりしか.な
こりの袖をふりきり.御前をまかりたち.はや下つけさしてそ
いたはしやとも春殿.やすつなか下りてのち.山ちにゆきてはた
きゝこり.たにゝさかりて水をくみ.すみなれ給はぬ草の色
.おざゝこざゝにもまれつゝ.かめわか丸にちかつき.いかにかめわか.かく
すさましき山のをく.うらみとさらに思ふなよ.仏のすかしを
たつぬるに.だんどくせんのさがしきに.うきなんきやうをし給ひ.つ
ゐにしやうがくとけたまひ.三かいたうの.しやかとはならせたまふそ
(一ウ)
挿絵(二オ)
や.おほりへかへりて.はゝをなくさみ申へし.はやくかへれやわかめわかよ
.かめわか殿ハ聞召.か様のことハりよくきけはそれかしもなんきや
うして.ちゝうへあにをしゆこし申.我等も仏と成へき也.御身かへらせ
給ふへき.ともはる殿ハ聞召.なんちかいふハさる事なれ共.あに
のしたるなんきやうに.おとゝのたすかる事もなし.我等兄弟なんきやうして
.ちゝはゝをしゆこし申.われらも仏となるへきと.すかしたまひてかめ
若よ.はやくかへれとの給へは.いたはしやかめわか殿.ちからおよはすかへ
らるゝ.とも春殿は御覧して.いまた年もゆかさるに.か様のうきめをみ
るよりも.かくすさましき山中にて.水くみゆくはふしき也.よし
何にても候へ.いさつれゆきてうらんとて.ともはる殿をひつたてゆ
けは.とも春殿は御覧して.か様につれ行うらるゝ事も.せんせの
(二ウ)
むくいと思ひけれは.うらみはさらに候はす.さりなから少いとまをたひ給
へ.はゝや弟の候に.さいこのいとまこいを申へき.ぬす人共は是をきゝ
.あゝかしましゝそれあゆますはうてやとて.とも春殿をひつたて
ゆけは.是は扨をきかめわか殿.あにこをまちかね出たまふか
.此由を御らんして.なふいかに人々たち.あにうへをは.いつくへつれ行
給ふそや@.すかりつかせ給ひけれは.よとうの物は是をきゝ
.一人たにもうれしきに.二人とるはさいわゐよと.かめわか殿をもひつ
たてゆけは.とも春殿は御らんして.なさけなの人々や.いほりにはゝ
かましますか.一人ならす二人まてうらせ給ふ物ならは.はゝの命はある
ましき.をゆるし有てたまはれと.りうていこかれなき給ふ.其中に
も.としよりたるぬす人は.けにもとや思ひけん.其きにてあるならは
.さてなんちはゆるすとて.かめわか殿をつきはなせは.かめわかあま
りのかなしさに.なふいかに人々たち.御覧候へあにうへは.さやうにあしても
きれそんし.さまての事もあるへきか.われはとしもわかけれは.すへ
(三オ)
もひさしううらるへし、あにこにかへて給はれと、すかりつかせ給ひけ
れは、ともはる殿はきこしめし、いかにかめわか、いほりへかへりてあるな
らは、はゝこにかくと申なよ、たにゝさかりて水をくみ、ゆき方しらん
と申へし、御ゆるしあるをさいわゐに、はやくかへれやかめわかよ、ぬす人共
あらなさけなのあに子@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
はこれをきし、あゝかしましきやつはらとて、ともはる殿をひつた
てゆけは、かめわかあまりのかなしさに、あとをしとふてなふ人々、
われにかへてたまはれとあまりにつよくなき入てとある所にたを
れふし、すてにむなしく成たまふ、ともはる殿は御らんして、おとゝかむな
しく成とみへてありとたちよつてみたまへは、はや命はなかりけ
り、ともはるゆめ共わきまへす御しかいにいたきつき是はゆ
めかやうつゝかや、ついにはそわぬみちそかし、あさましのうき世
やと、なけゝともさけへとも、其かいはなかりけり、よとうの物は是
をみて、さてもふひんの次第とてたにゝをりては水をくみ口
にふくませみたまへはすこしいきをそつきたまひあにこはいつ
(三ウ)
くにましますそわれにかへてたまはれといふとおもへは又きへいらんと
したまへは、よとうの物はみるよりも扨もふひんの次第かな其きにて
あるならは二人共にゆるすといへはかめわか殿はかつはとおきこ
は有かたき御事と御てをあわせおかみ給へはよとうの物はこれ
をみて扨なんちらは何物の子共なれはかく山中にはすみけるそ
なのれきかんといへはともはる殿はきこしめしなのるましきと
おもへとも此子か命のおやなれはさらはなのりてきかすへし
こうつけのちう人かんらの大夫とも正か子共也とのたまへはよとう
の物はたちすさりこはみやうかなき次第かなわれらもたしよの物
にてなしとも正御代の御ときはたみをあわれみしひをたれ我等
ていの物まてもよに有けにていたりしか今かけのふかおふれうす
れは何かについてかりたてられやまい心のなきまゝにかなはぬさ
んそく仕りをもはぬうきめをみる事よたゝいまゝての御事は
しらぬ事にて候へは御ゆるし有て給はれやいほりへ御共申さんとやか
(四オ)
てきやうたいおいまいらせいほりをさしてそいほりになれば母上
にたいめん有此由かくとのたまへは母こ此よしきこしめしおもはぬう
きめをみる事よりうていこかれなき給ふよとうの物はみるより
もあさましの御やりとりやとたにゝおりては水をくみ山ちにゆきて
はたきゝをとり又こそ参り申へきと御まへを罷立たゝよの中の
物のあわれはこれ成と、上下あはれをもよをしけるともかくに
も此人々の心の内あはれ共中/\何にたとへんかたもなし

こ大ぶ 五段目
さてもそのゝち、あん左衛門やすつなは、下野に下りしか、何とそちり
やくをめくらして、君のましますろうへは、ちかつかましやとあんしける、
けに今おもひ出して有、こつしきひ人のまねをして、うちのやうを
みはやとて、出たつようこそあはれ也、つゝれしみのをうちきつゝ、や
ふれしかさをひつかうて、あしてをよこしつゑをつき、あしよはけにも
ふみ出て、わかみをきつとみまはせは、さもあさましきすかた也、か様なる
(四ウ)
も君のため、うらみはつゆもおしからす、なみたをみちのしるへにて、ゆ
く道さらにわきまへす、是こそ君のましますろうとみへて、竹の
ひと村しけりたるに、ほりほりまはし道いをつけ、ゆきこう人の
まれにして、にちやてうほのはんのふし、すこうきひしうみえけれは、
とりならては、か様へきやうもなかりけり、か程けはしき所にも、心ふかくと
まりつゝ、道のくさはもみもわけす、やすつなおもふ様、けにま事、此
ろうのはんとうは、なかさはの源蔵ときくなれは、内のようをみはや
とて、ろうのまへをおしとおつて、門くわいにさしかゝつて、つかれはてたるこ
つしきに、せきやうをたへやつとこうた、はんの物は出あい、此所にはしさ
い有、こつしき人によらす、かたくきんせいなる由をは、あの門くわ
いにうつたる、ふたをはみぬかと、つへふり上てはたとうつ、やすつなうた
れて、いかにもしほれたるふせいにて、いかにかた/\、か様のこつしきのていなれ
は、ふたとやらんもよみゑぬゆへ、是迄参りて候也、何事もたゝ御ゆる
しあれと申、はんの物はこれをきゝ、口のこうせう成こつしきとて、又つ
(五オ)
ゑふりあけうたんとすれは、其時けんそうははしり出、やあさなしそ
わか物、あのこつしきか、何とてさ様の事をしるへきか、あのこつしきも
いにしへは、よしある物のはてやらん、いつしきをもとめ、つゆの命をつなく
物を、人のゆくゑはしれぬ物、あのろうなる、かんらをみよ、うきよをめ
くるをくるまの、むくいのほとのおそろしきに、せきやうをとらせいなす
へし、承と申て、やかてせきやうをとらす、其時源蔵申けるは、此所に
はしさいあつて、こつしきひ人によらす、かたくきんせいなれは、かさ
ねてまいるへからすと、いひすてゝおくにいる、やすつなは、けんそうかう
しろすかたをつく/\みて、きやつは心さしふかきさふらひかな、かさね
て参り、いましめられ、あしかりなんとおもひつゝ、まつ/\こうつけに
下り、わか女はうをたのみ、源蔵かもとへ、下のみつしに出し、其ゑんを
もつてたはからんと、あんしすまして、はや下野さしてそ、下野に
なれは、にうはう此由みるよりも、めつらしのやすつな殿や、みたい
所やきんたちは、何とかならせ給ふそや、もしうちすてゝも下り給ふか、は
(五ウ)
挿絵(六オ)
や/\かへらせ給ふへし、わらわもひさしくすてられて、うらみにたへて
折けれと、しゆくんのためにて候へは、うらみはつゆも候はす、やすつなき
いて、御みもひさしくすておきて、うらみかす/\申さすして、左程
君をおもふかや、いつれもつゝかましまさぬそ、心やすかれ君たちは、
それかしと有重か、ともをして、やう/\松ゑたのしゆくにつく、かけ
のふおつての物をみつけ、有重かたちのおつて、ふせきたゝかふその
ひまに、うすいかたうけに、おちのひて、よきにいたはり申也、にうはういかに
とかたりける、にうはうきいて、さてもうすいの山中に、すみなれ給はぬ
いほりにて、たれかは有てみつをくみ、たきゝをこりてまいらせん、いたはし
さよと申けり、やすつなきいて、左様に君をおもふかや、御みをたのま
んしさい有、御みは源蔵かもとへ、下のみつしをしたまへや、たとはゝ西を東
と申共、是をもそむきたもふなよ、御みはとしもよりたれと、おい
きの花のにほやかに、かたちもいとなまめいたれは、さためて源蔵、た
わむるゝ事もあるへき也、それをもそむき申なよ、やすつなうらみと
(六ウ)
そんすまし、それふうふの一やのまくらをならふるも、五百しやうのゑん
ときく、まして御みとそれかしは、すねんちきりをこめ申、二世まて
たのむおつとのため、おふしやうくんなこゝくへ行、ゑんのこうしはひこくに
かへし、きやうこうせんのみよとなし、へちのこうしにまみへ、二たひきさ
きとそなはるゝ、かゝるためしも候へは、はんしはたのみ奉る、なふさていかに
とありけれは、にうはうきいて、せかもゝとせをふるとはいへとも、身を
すん/\にきさまれて、ほねひし/\おにつけらるゝとも、しゆくん
の御ためつまのため、つゆの命はをしからす、やすつなきいて、さあらは
下つけにくたらんとて、ふうふもろ共うちつれたち、はや下野さして
そ、 しもつけになれは、やすつなは女はうをちかつけ、あれなる門こそ
かの所よ、これなるきのもとをはなれまし、御身もやうのあるならは、かな
らす出させ給へし、さらは/\の、なみたのわかれそあはれなり、源蔵
か門くわいにたゝすみけり、内よりけちよかたち出、御身は此内に、よう
はしあるかととふ、女はうきいて、さん候それかしは、此国のならひなる、な
(七オ)

【注】
三ウ5→ 古正に無し
三ウ5→読み取り不能「けなそ@うへさまけにもかしをたとへてのめ子」か?

すの里の物成かきよ年のはるおつとにはなれおつとのをしかみつから
をうらんたくみをきゝたれは此所へ参りたりあはれ此内のしものみつし
を仕らんと申けるけちよきいて上へ此由申さんと源蔵に参りこの
よしを申源蔵きいてさあらは其物こなたへめせとの御てう承て.源蔵
これをみていや/\けちよはしたにてあらすさあらはひきあけつかはんと
やかて.なをはこ大ふとつけらるゝもとよりもこ大ぶ
はかねてたゝみし事なれはあさな夕なにみをゝしまず.たちゐ
についてもこざかしく.御うちとさまのものまても.なさけをかけて
ふるまへは.こ大ふにまされる.女はうたちは有ましきとよろこはさる
はなかりけりとにもかくにもかのこ大ふか心の内たのもしき
とも中/\申はかりはなかりけり
こ大ぶ
六段目
さてもそのゝちさる間こ大ふはかねてたくみし事なれは源蔵に
相なれて月日をおくりいたりしかいよ/\源蔵心をつくしさしも
(七ウ)
大事のろうのかきをあづくるこ大ふなのめによろこひ此かきのてにわたる事
天のをしへと思ひつゝ折節こ大ふくはんねんしけるはなむやしよほうの
仏神三宝ましてとかなき我君をたすけ給へと朝夕申されたりけれは
折節其よはあめかせしきり成けれは源蔵はこ大ふをちか付
こんやは雨風はけしけれは番の物にかたく申付よといへはこ大ふき
いて其きならはさけをくたされよといへは源蔵けにもと思ひやかて
酒や肴{さかな}をこ大ふにくたさるゝこ大ふなゝめによろこひいそき
ろうやへをしとをらんとおもひしかはんの物かたかいびきしてねいりけり
こ大ふ是をみてもしたはかりて有らんにおこいてみんといふまゝに
やあいかに番の物大事の御ばんをする物かかくふかくねいるか
おきあへやつとよははれとこたゆる物はなかりけりよき隙成と
よろこひてろうのそはへたちよつて此内にともまさやまします
みつから也と申けるいたはしやともまさ殿よもすから念仏申て
ましますかふしきやなさよふけ方にしかもによしやうのこゑときくなれは
(八オ)
何物成ととかむれはやすつなかつま成そとも正きこしめし
是はゆめかやうつゝかとろうのこうしより御てを出させ給ひけれは
にうはう是をみて是はとも正にてましますかやすつなかつま成かと
りうていこかれなきたまふとも正はきこしめし兄弟わか共はとんよく
ふこうのかけのふかよもやたすけてをくへきそ何とか成て
有らんとなみたと共にの給へは女ほうきいて心やすかれ君たちは
やすつなかともをしてうすいかたうけにまします也とも正きこしめし
ろうより出てあれはとてさかゑんこともほとちかしこ共をよにたてゑさすへしと
なみたとゝ共にのたまへは女はうきいておろかな君の御てうかと
かき取出しろうのとひらををしひらきよう/\よろおひ出給ふ
かひさしくゐすくみましませはきやうふもさらにかなはぬはこ大ふ
あまりのかなしさに御うしろよりおさへかゝへてやう/\ひときのもとに
つくいつもつまの安徳{やすつな}は此所に有つるかこんやはいつくに有けるそ
たからかにのたまへはやすつなはもりのかけよりつつと出おもはす
(八ウ)
しらすにいたき付是は/\と斗也こ大是をみてあわてたり
とよやすつな殿かねてよりかく有へきとはしりたまはぬかこゝは
かたきのもとなれはおつてのかゝるはぢでう也わかれたいまのなき様か
やすつなきいてやかてともまさおいまいらせとふ鳥のことくにて
はや上野さしてそ源蔵此由きくよりもさてはこ大ふにたはかれて
有けるや此まゝにてはかなはしとやかてかけのふに此由を
申かけのふ大きにはらをたて都へのほしてかなふましとやかて
せいをもよおしける是はさてをきとも正はやすつな女はう御共
にてうすいかたうけへいそかるゝ三人のよとうの物うすいかたうけ
に参りしか安つなこれをみて何物成ととかむれはよとうの物は
きくよりもいやくるしうも候はすうすいかとうけにおはしますみたい所や
きんたちにさけやさかなはすいさんのためたゝ御みまいはかりと申
やすつなきいてあふこれもうれしゝさあらは御共申せとてうすいかとうけ
へいそくにほとなくつきしかは此由かくと申けれはみたい所や
(九オ)
きんたちはおもひもふけし事共とていそきはしり出たまひ
とも正にいたき付りうていこかれなき給ふおつるなみたの下よりも
あの三人の物は何物成とのたまへはわか君聞召か様/\と申さるゝともまさ
きこしめし扨は人間にてはあるましきと御てをあわさせおかみ給へは
よとうの物は是をみてこはみやうかなき次第かなまづ此たひは
都に上りとかなきよしをそうもんしかへつてかれらをほろほさんに
何のしさいの候へき我等かい/\しく御共せんと申やすつか
申ける様はみな/\の申でうもつともにては候へ共我等そんし候には
まつ/\こうつけにかいふんのまはしかけのふうつての水ち都へ御のほり
ましませといへはとも正けにもとおほしめしやかて御はんの
三人の物にくたさるれは御前をまかりたちみなこと/\くふれらるゝ
いにしへのろうとう共うんかのことくあつまりて一日一やの其間に
一千よきときこへけりとも正なゝめにおほしめしつわもの共を
引くしてはや下野さしてそ是はさてをきかけのふは大せいを(九ウ)
挿絵(十オ)
もよほし都をさして上りしか道にてへたとわふとも正は御らんして
あはかけのふとみるよりもときをとつとあけたかけのふ大きにをとろき
たかいにときを合けるとも正殿は一ぢんニすゝみ出かけのふ
わかまゝにしけるよなうちとゝめよとのせんしにてたゝいま是へよせたる也
はらをきれとそ申けるかけのふきいて何かくいふはとも正とや
ともまさひさしくろうしやをしさそやむねんにおもふらんかけおちしける
とも正をうちとゝめんか其ために是まてよせて
参りたりはやうちとれやとけしをなす承ると申てわれをとらしと
かゝりけりやすつなはこと共せす大たちぬいてさしかさしここゝを
さいことさすかよせては大せいにてみなこと/\くうたれけれは
かけのふ力をよはすし下つけさしてにけゆくをやかてからめ奉り
とも正の御めにかくるとも正なのめにおほしめしめしうとを
引くしてはや都をさしてそ都になれはすくにたいりへ
さんたい有此よしかくとそうもん有御門ゑいらんまし/\てかけのふ
(十ウ)
わかまゝにしけるよな又とも春はおやこう/\のものなれはとてさんみの
中将になされかけのふはかたきなれは心のまゝにまかすへし
とりんけんやかてこうむりかたしけなしとて御まへをまかりたち
いそきしゆく所にたちかへり物のふをちかつけかけのふはからへと
御てう承つてやかてくひをそうちをとすそれよりもとも
正都にありてもせんなしとてはやこうつけさしてそ
くにゝもなれはいにしへのそのあとにかすのやかたをたてならへ
二たひゑいくわとさかへたまふいにしえのろうとう共われも/\と
まかり出きみをしゆこし奉りもんせんにこまのたてとはな
かりけりためしすくなき次第とてかんせぬ物こそなかりけり
寛永拾八年五月吉祥日
西洞院通長者町さうしや九兵衛板
(十一オ)


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