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四天王若さかり

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校正

翻刻にあたり、『金平浄瑠璃正本集 第二』所収の大阪大学附属図書館蔵本(底本と同一、以下【金】)本文と比較対照した。

(一オ・2行目)【底】@み—【金】かみ
(一オ・3行目)【底】天わう@@うじ—【金】天わうのわうじ
(一オ・10行目)【底】程@@—【金】程こそ
(一オ・11行目)【底】ちく@—【金】ちくご
(一オ・12行目)【底】やしやのことく@@—【金】やしやのことく成[しゝ]
(一オ・13行目)【底】ひいたりけ@—【金】ひいたりける
(一オ・13-14行目)【底】一@@らぐい—【金】一ば[んは]らぐい
(一オ・14行目)【底】りん正@—【金】りん正坊
(一オ・14-15行目)【底】@@@@尺—【金】そのた[け八]尺
(一オ・15行目)【底】@@@@—【金】我を頼[て]
(二オ・1-2行目)【底】@かへし—【金】つかへし
(三オ・16行目)【底】@光—定光
(五オ・3行目)【底】やすかげ.—【金】やすかげ
(五オ・15行目)【底】いまだ—【金】未だ
(五オ・15行目)【底】しつけん@—【金】しつけんを
(五ウ・1-2行目)【底】@や@@ひ立—【金】はや/\思ひ立
(五ウ・4-5行目)【底】@て—【金】大て
(五ウ・10行目)【底】ゑつ@—【金】ゑつ中
(五ウ・14行目)【底】つか@—【金】つかう
(六オ・3行目)【底】ぐんせい—【金】ぐんぜい
(六オ・3行目)【底】きを—【金】ぎを
(六オ・4行目)【底】@せくる—【金】よせくる
(六オ・9行目)【底】さ@@ぶ—【金】さきとぶ
(六オ・10行目)【底】なんしか—【金】なんしが
(六オ・11行目)【底】@人—【金】[三]人
(六オ・13-14行目)【底】さつ@@さい@り—【金】さつと引さいたり
(六オ・14行目)【底】な@—【金】なげ
(六オ・16行目)【底】@@@度—【金】へて一度
(六ウ・1行目)【底】こゝ@@いこ@@@かへば—【金】こゝをさいことたゝかへば
(六ウ・6行目)【底】はた@—【金】はたと
(六ウ・7行目)【底】@@是—【金】た[そ]是
(六ウ・8行目)【底】なか@—【金】なか光
(六ウ・12-13行目)【底】する@—【金】するり
(七オ・6行目)【底】十@—【金】十五
(七オ・9行目)【底】おつふ@@—【金】おつふせ/\
(七オ・10行目)【底】@@だに—【金】御事だに
(七オ・11行目)【底】ゑい@ん—【金】ゑいらん
(七オ・13-14行目)【底】@たふ—【金】[う]たふ
(七オ・15-16行目)【底】御@き—【金】御すき
(七オ・16行目)【底】敵@@@—【金】敵はせい
(八ウ・1行目)【底】@@ゆと—【金】有しゆと
(九オ・8行目)【底】有ましきそ—【金】有ましきぞ
(九オ・10行目)【底】と@め—【金】とがめ
(九オ・10行目)【底】@@けなき—【金】なさけなき
(九オ・13行目)【底】御@@@—【金】御らんし
(九オ・14-15行目)【底】@でに—【金】すでに
(九オ・15-16行目)【底】思ひし@@@@たつらに—【金】思ひしはみないたつらに
(九オ・16行目)【底】也た@—【金】也たる
(九オ・16行目)【底】何@@@@—【金】何とて日本
(九ウ・2行目)【底】お@なしやかに—【金】おとなしやかに
(九ウ・15行目)【底】様@—【金】様は
(九ウ・15-16行目)【底】@@みに—【金】一もみに
(十オ・11行目)【底】@@み出—【金】すゝみ出
(十オ・13行目)【底】らいくわ@@@—【金】らいくわうかな
(十オ・14行目)【底】ぜひ@—【金】ぜひは
(十オ・16行目)【底】なさるゝ@@@—【金】なさるゝ事にて
(十一ウ・5行目)【底】かいする—【金】がいする
(十一ウ・14行目)【底】はんへらん—【金】はんべらん
(十二ウ・12行目)【底】ごちん—【金】ごぢん
(十三オ・1行目)【底】す@は—【金】すれは
(十四ウ・2行目)【底】うちか@みに—【金】うちからみに
(十四ウ・3-4行目)【底】@@ざしに—【金】くしざしに

翻刻

四天王若さかり
初段
さても其後そも/\仁王六十一代れいぜんゐんの御宇かとよ.其比都にははりまの@み
多田のまん中とてたぐいまれなる名将有せんぞをくわしく尋るにせいわ天わう@@うじ.六
そん王経元しん王の御子也.その身のゑいぐわひをおつて御子二人おはしますちやくし左ひやうへの
ぜうらいくわうとて十八さいはかり事をいやくの内にめぐらしかつ事を千里が外へかうせきかうがと
らをばくせしゆふ力をもさみする程のゆふし也.次はかくどう丸よりちかとて十五才に成給ふそ
の上家のしつけんに藤はらの仲光とて上をうやまひしもをなでじんぎ正しき兵の有こゝに天
下のまれものにわたなべのつな坂たの金時すへ竹.定光とていこく本朝にならびなき大力.
かうもくぞう長の四天王とかうしばんみんおそれをなしにけりされはまん中御心にふそくなくは
るのあしたの花のゑん.秋のゆふべの月のがくよにゆゝしくぞおくらるゝくわほうの程@@めでた
けれ是は扨置その比又ぶんこぶせんちく@三が国のあるしをはあかはし治部の太夫安かげと
ておごり第一の弓取有されは此程つくしよりこゝんめいよの大力とてかたちやしやのことく@@
ふんじんの大男四人つれやすかげをみがけ閏九月のすへよりもあれに付そひいたりけ@先一@@
らぐいの道くわんがうせきげんかくてつしん.ゆつぎの大がう宗とら八天句のりん正@とて@@@@
尺斗にてかうりきはつたるゑせ物也有時やすかげ四人の者を近付御へんたち@@@@
(一オ)
挿絵(一ウ)
挿絵(二オ)
来りしもあのらいくわうが四天王と力をためしなをあらはさんためにて有されはらいくわうに@
かへしものゆふりきはつたると云共いまだはたちにもこすやこさしの若ものにて力かたまる事
あらじ御へんたちはたぐいすくなきものにて有然るにあの若物を天下の四天王といわせつゝまさ
るかた/\人しらずいざやだいりに上りみかどにそうもん仕りていしやうにてきやつばらと力をた
めしいち/\取てなげちらし人にぢぼくをおどろかさせまん中おやこめんぼくなくいせひもおとり
すいびせん其時は此やすかげまん中にまさりはすると.おとらざる名大将にて有間天下の
けんへい取おこなひかた/\を四天王とかうしうへみぬわしとさかへんは人々いかにと申ける四人のもの
共承りそれこそ望にまいりたり君のふるまひまん中よりばつくん也人おゝき中にてすぐつて奉公
申さんいそきだいりにさんだい有我等が事をそうもんしきやつばらとはれわざの力をろんしいち/\取
てねぢすへちじよくをあたへ申さんいかにと申けるやすかげ大きに悦びさあらは我だいりにて申
上んとてゑもんつくろいだいりをさしてぞ上りけるだいりになれはからす丸大なごんに申やう此程つくし
よりめいよの大力四人迄まいり満中が四天王と力をためし申さんと望申候あはれ庭前にて
両方を召出しちからの程をゑいぶんに入申此ものが望の程かなへ申度とそうもんす大なごん
聞召めつらしき事共やと急き此由そうもん有みかどゑいらんかぎりなくはれ/゛\しき見物かないそぎ
力をためさせんまん中めせとのちよくでう也承候とて頓てちよくしを立にけりまん中何事やらんとさんだ
い有うちよりのせんしにはいかにまん中治部の太夫が申するは此程つくしよりめいよの大力四人上りなんぢか下
(二ウ)
人四天王と力をためさんとそうもんすいそき召よせためさせよいかに/\とせんし有まん中聞召こはめ
つらしき望也いかにやすかけいらざる事を取立て御望申さるゝたとへこなたがかちたるとも又はそな
たがかちたる共あまりよからん事にて有おとなけなくも御所望を申さるゝ事はひが事やと大
よふに仰けるやすかけ聞てなふ我も左様に存しがぜひなくそうもん申候まん中殿と申さるゝそ
の時らいくわうさらばかの者召よせ給へやすかけ聞て頓て使を立けれは四人悦びさんだいす又らい
光も四人をめし給ふ互にあいをへだてつゝまなこのそこにかとをたてゆう/\となみいたりらいくわうつ
なにむかい安かけか望にてあの四人の者共と力をためす事にて有ずいふんはげませ物共と仰
けれは承り候一々つかみひしがんとおの/\思ふ所存いわねと上へあらはれたりかの四人のもの共もわか
やつが何程の事有へしとこぶしをにぎりいたりける其時六ゐのしん共くろがねのほうを二三十人にて
かきて出まんなかにどうど置からす丸殿立出いづれにても罷出あのぼうをねぢ取べし承り候
と定光つつと出ぼうのはしをむずと取八天句のりんせう坊つゞゐて是も又ほうのはしをおつ
取ゑいや/\とねちあいしがさし物かなぼうけふり立中よりふつとねぢきつたり人々御らんし是は何れ
もせうぶしれず一人つゝの力を見せよ承候と申所に六ゐのしん百せうのもてあつかうあらくわ十枚
ぢさんするゆつきの大力罷出かのくわ四枚おつ取二つにさつと引さいたり人々御らんし残六まい
一度にさけ承候と申六まひのくわおつ取ゑいといふて引共さくる事はなしその時すへ竹罷出是
ゑ給はり候へと六まひのくわうけ取さつと引さき是程の物はものゝかずにて候はすさきの@光
(三オ)
挿絵(三ウ)
挿絵(四オ)
のぼうは是よりばつくんましたるゆふ力也坂たのきん時罷出ていせんの松の木二本両のまんなかむ
すと取ゑいといふて引よせ二本の松をねぢ合是をはなせと云けれは山がきげんかく立より力に
まかせゑいや/\と引はなせとちつ共はなれずわがうでにはかなはずとせきめんしてこそ入にけるま
んざの人/\金時がかう力ばつくん也との給ひてしたをまいてぞおはしけるおさめのせうぶに也け
れば四天王ずい一わたなへのつなゆらり/\罷出なにを持てせうぶをせんとおにをあざむく力う
でなてさすりさらぬていにていたりけり然るにくろがねのたて二枚かさね七八十人にてかきて出うち
よりのせんし也是をふみぬき給へかた/゛\つな承何とそれかし仕らふからぐいの道くわんいや某さきをせん
とする/\とはしりよりゆんでのあしをふり上ちからにまかせ二つ三つとう/\とふみけれとちつともぬけん様
もなしその時わたなべ立よりそこのき給へと云まゝにめてのあしをふりあけ天ぢもぬけよとだう/゛\
とふめば二まひのたてをふみぬきたりてい上の人々あはやめいよのわたなへとだうをんによばはる聲
しばしはなりもしづまらすどうくわん大きに腹を立只今のは某が大かたふみぬき候を跡よりつなが
ふみぬくはそれは我があらごなししたるゆへと申やすかけ聞て尤それはさぞあらんと大きにあざむく
らいくわう御らんしつなが力てふみぬきしはかくれなしと申せはさやうにあれは力なしとかうはいらず力ずもふ
一ばんとれと有けれはわたなべじするに及ず.すまひにせん道くわん悦び望は是にて候とわたなべにつかみ
付つなわらつてなふひきやう者めがいまだやういもせずだしぬきたるふるまひと上おびつかみくるり
/\とふりまわし大ぢへ入と取てなげはしりかゝりこうべみぢんにふみくだくやすかげを初め三人の者共
(四ウ)
こはいかにらうぜきと太刀のつかにてをかくるわたなへわらつてあふわが力をあらそふものゝせうこにはかくするぞ
よくみよと少もさはくけしきなしうちよりのせんしにはやすかげふるまひびろう也すてに力はらいくわう
方かちたり両方共にたいじゆつ仕れとのせんし也やすかげ.あまりの口をしさにしさい有げに御ぜん
をたつわたなへみていかにやすかげ所望ならば望給へ但御へんかちすまふに出られうかと小がいな
取て引たつるやすかげめんほくうしなひすこ/\と御前を立四天王きつとみてうでもかなはぬ力わざ
とはきやつばらが事也とどうをんに打わらい君の御供仕りやかたをさしてかへりける此者共がふるまひ
ぼんふのわざにてあらずやとて見る人聞物おしなべてみなかんせぬものこそなかりけれ
二たんめ
さる間あかし治部の太夫やすかげはいそきしたくへ立かへり三人のもの共を近付いかにめん/\今日だいり
にてらいくわうがふるまひむねん也いそぎだいりをふみつぶしまん中ふしに腹きらせんされ共なにあふゆふし
それかし思ひ出せる事有と頓てゑちごゑつ中の大将ゆはらの左衛門つね光へ使をこそは立にけりつね
光何事やらんと使と打つれ来らるゝやすかげゑつきかぎりなく是へ/\とせうじしゆ/゛\にもてなしなふいか
につね光殿かやう/\のしさいにてだいりにてまん中と力くらべのいしゆの有御へんもよからぬ中なれはいざや
二人といたしかのまん中をほろぼしてきん中をふみやぶり天下一とうに両人してむさぼらんはいかに/\と申けるゆ
ばら聞て尤それこそ望たりらい光いまだ若物とは申せ共なんぞ我こそ天下のしつけん@かうふる
とてよをわがまゝにふるまひ見るにしんいのほむら也そも両人してぎへいを上はそくしに国/\みだれお
(五オ)
のれとまん中じがいせん其時両人立わかれ日本をはん国つゝちぎやうせん事うたがいなし@や@@ひ
立給へやすかけ悦び某がちりやくにはまん中を国中に置かなふまし御へんはくにへくたりゑちごゑつ
中のせいをもよふしくち/\を切ふさきろう城なされ候べし定てせけんにかくれなくまん中おや子むかふべし
そのるすにそれかしみかどをいけ取らく中をくろつちとなしさいかいなんかいきりしたがいあはた口を@
てと定めまん中を待うけん御へんはていたきいくさもせす時々かけ出ふせぎに心をくだかせは
付そう者共みなちり/\におちゆかんさあらばまん中京へ入もかなはすおくへおちんもかなはずしか
いなく腹を切へきぞいかに/\と有けれは是こそ望のちりやく也へんしもはやくいそかんとやすかげにい
とまをこいひそかに国へぞくだりけるくにゝもなれはさいそくまはしせいそろへおくかい道にせきをすへみつ
き物をばい取いきをひかゝつて待にけりされはにや大はかたちよりひきやくとうらい仕りそうもん申
ける様はゑちごゑつ@の大将ゆばらのゑもんきやく心のくわだてあたりちかきくに/\へみだれ入兵らうをう
ばい取城をかまへおくかい道を切ふさきむほんのくわだてしきりにて候すてに天下の大事也と大いき
ついてそうもんすみかと大きにおどろかせ給ひまん中ふしを召給ふまん中おや子やかてさんだいなされける内
よりのせんしにはゑちごゑつ中のしゆごゆばらのゑもんきやく心のくわたつるいそぎ向てついはつせよ承候
と頓てだいりをたいじゆつ仕り五きないのせい共へふれ状まはしせいそろへつか@官くん五百よきあん
な元年二月二日くわらくを立てほつ国さしてぞむかはるゝあかはし時分今成とて一もんいへの子八千よ
き馬ものゝぐとやういして上を下へとかへしける此事よもにかくれなくみかど大きにおどろき給ひまん
(五ウ)
ぢうの次なんかくどう丸を召給ふよりちかせんぢん承り仲光を御供にて頓てさんたいなされける内よりのせんし
にはすでに都にぎやくしんの者有きんりをしゆこせと有けれは承り候とざい京の人々にいち/\次第に
ふれ給ふされともぐんせいときのけんにおそれをなしやすかげ方へと成にけりされ共だいりにつめたるはきを
むねとする兵共少もぎゝするきしよくなくもん/\をかためわつか六百七十き@せくる敵を待に
けりあんのごとくやすかげは大てからめてふたてに也東西より時の聲をそ上にけるろくししんどうおびたゝし時
のこゑもしづまれはなか光やかてかけ出てなにものなれはきん中へもつたいなくもをしよするいかに/\と有けれは安
かけ聞て事めつらしきいゝ事かな是こそあかはし治部にて有いらざるぬるきなまくげに一身いたししなんぞやたゞ
ねんふつを申さいこをまてとよばはつたり仲光聞てうちわらいさてはちぶにて有けるかむかしはせんちを向て
よみけれはかれたる木にも花さ@@ぶ鳥もちにおちあつきあくしんもしたがいきまつだいぎやうきなれ
ばとていかで十せんの君に向て弓を引矢をはなすべきかへつてなんしか身にたちしせんとから/\とわら
ひけるやすかけ聞て腹を立あれ引さけてまいれさげ切にいたさんぞ承り候と@人の郎等共一めんに打
て出だいり方には中みつうたせかなはしとあしたの二郎大たちふりかさし一もんしにはせよるをでんしんやがて
かいつかみ是いかゞいたすべき大かうみてこなたへと云まゝにたがいにもゝをむずと取二つにさつ@@さい@
りいわ松八郎むねんと思ひとんでかゝる所をりんせう是をかいつかみめよりたかくさし上二でう斗な@
たりけるくわんぐんぎゝして見へけるを仲光ざいを打ふつてかいなき物のふぜいかなかけよ/\とよばはれば人々こ
れに力を@@@度に木戸をひらきやうめいもんのすしかいにおつつかへしつひはなをちらしてたゝかいけりだい
(六オ)
りはふぜいと申せ共なをおもんしぎを守るものなれは命をちんかい共おしますこゝ@@いこ@@@かへば
よせて一千よきうたれ身かたはわづか百き斗しんたりけりかくてその日もくれけれは軍はあすの
うのこくこそしからんとそうもんをかたむれはやすかげぢんをぞ取にけるこゝに八天ぐのりんせう坊今日の
たゝかいにわがてにかけ五六十もなぎふせたりとは思へとも打ごみのいくさにてめにたつ事なしこよひぬけかけし
大将とくむか又なか光めをつかみさくか二つの内ははづさしと只壱人しのびたいりをさしてぞいそきける
爰に又仲光もけん見のためにたいまつもつて辻/\をまいりしか道にてはた@行あひて中光やかてこ
とばをかけそれにしのびてまいりしはなに人にて有けるぞりん正聞てさゆふは@@是こそ藤原の仲光
ゑゝ望所のさいわい林正ほうにて有けるはとはしりかゝつてむずとくむなか@もぐわんらい心聞たる大力
と申せ共りん正事共せず取ておさへくびをかゝんとしたりけり中光上成てきの左右のかいなをとつて
りん正ぼうをくみとめたりよれや/\とよばはればさき坂兄弟はせ来りいつれが敵そ中光とてた
いまつ取てきつとみてゑゝうへなるこそかたきぞとて左右よりむんずとくみけるをりん正ゑたりといふまゝ
にあにの太郎をかいつかみ七八間なげすておしかゝつてくびねぢきるそのひまになかみつさしぞへす
る@とぬきつかもこぶしもとをれ/\と三かたなさしさゝれてよはるをはねかへしくびかき切て立あがり
おに神と聞へたる八天句のりん正を仲光うつて有けると本ぢんさして引かへすかの中みつがてからの
程ほめぬものこそかなりけり
三たんめ
▲去程によはほの/\と明けれはよせておこり出ゑびらやなぐい打たゝきて時の聲をぞ上にけるより
(六ウ)
ちか此由御らんして身かたはもはやせいもなしいでちしんのせうふにせんつゞけや/\との給ひて切て
出させ給へは御まへさらぬ若もの共い上三十八人前後につらなりたせいの中へわつて入おもてもふ
らずたゝかいけるおの/\ぶん取あまたしてついぢの内に入にけりみかどなんでんのひろびさしに出させ
給ひゐんのせんし承り惣大将よりちかを御めし成はと有承候とよろひにたつやそのかずしらず三か
所てをおい給ひしろいとのよろひを.くれなゐのことくそめかへしながるゝちをもぬくはずきしよくかうだる
ふぜいにて庭上に畏るつゞいてなのる者共もいまた十@十六の若侍あるひはきず五か所七か所おい
ながら事共せざるていたらくけみやうじつめうはちがへ共つら玉しゐにをいては何も同事ならんと上下かんし
給ひけるみかどつく/\御らんし是らがふぜい何にたとへんかたもなしいくさの次第をかたるへしとせんし有より
ちかこうべをちに付さん候敵大ぜいと申せ共身かたは命をぎろにかけおつふ@@きりふせられよせて八千
七十き八方にやぶられて七条かはら迄五六度迄おい出し候あはれ君の@@だにも心にかゝらす.たと
ゑ天ちく迄もおい行やすかけをさげ切にいたさんと申けるみかと大きにゑい@ん有あの者共に酒を
のませよとのせんし也さいしやう承たいへいひとつかき出し三うらの五郎にわたしける五郎たいへい給はり.
よりちかに奉る大将御かはらけ取上三ごんさらりとほし給へは御めん有ぞかた/\承るとてたがいにのふづ@
たふつしばらくしゆゑんぞなされけるかゝる所へ中光敵のくび三つたちにつらぬきまいり某ゆふわうもん
に候ひしが餘り御内の酒ゑんのおと高くいくさ心にそまづして是迄まいり候御さかなは何より御@
きのやすかけがしやてい兵衛の介がくびさて郎等がくび二つ是/\御らん候へと御前にさしいだし敵@@@
(七オ)
挿絵(七ウ)
挿絵(八オ)
つきみかたはみな/\打しに仕り候かくてはかなはせ給ふましいそきみかどはゑいさんにりんがう@@ゆと
をたのませ奉らん敵はやみだれ入候へんしもとく/\と申けるゐんのさいしやう尤也はからへやと仰もはてぬ
にかたきうんかのことくみたれ入ときの聲をぞ上にけるすはやと云まはおそかりける頓てみかど八才の宮
一つこしにのせまいらせよりちか仲光其外いせの住人山田の九郎い上卅二人ぜんご左右にかこみ大せいを
おつはらいひゑい山へとおち給ふされ共敵跡をしたいおつかけけるかなふへき様更になしその時仲光山
田に向てやあ御へんは君の御供申はや/\おちのび給ふべし我々爰にふみとまりしはらくかたきを
ふせくべしとく/\と有けれは承り候と四五町斗は行と見へしが忽心かはりかたきの方へとくわはりけるよ
りちか仲光おどろきなむ三ぼうきやつめに君をうばはれしな此うへはなにといふ共君をとりごと
なさせいかゝせんとおとり上り申せ共かなふへき様あらざれはさらば敵をおつはらいほつ国へくたらんと大せ
いを四方へはつとおつちらしい上十三ぎほつ国さしてそくたりける去間やすかけは思ひのまゝに軍にかち
其うへみかどをいけ取悦事かぎりなく山田の九郎をめされ御へんがちうかうばつくん也とていつみの国五
千てうくだし給はる又みかどを汝にあつけ置也きびしくしゆごせよと有けれは承り候と御前を罷立
いそき宿所にかへりける一間所にみかどをおし入奉り八さいに成給ふ御宮をはわざとひとしきりとをへたて
てをし入申物おもはせんものをやとなさけもしらずふるまひしをにくまぬ者こそなかりけりあらい
たはしやみかどはそも思はざる御なんにあひぎよいのかはくひまもなくあゝ定なの次第かな昔か.い
まに至迄十ぜんのていとしかやうのなんにあふ事は聞たる事も更になしされはちんばんしやうの位を
(八ウ)
うけ四かいのまつり事わたくしなしと思へ共あやまる所あれはこそかやうに成ゆくらん是ぎやくしんのわざ
ならず天のばつするけい也よをも人をもうらむましあら定めなやとたからかにりんけん有泪に
むせばせ給ひけるあらいたはしの御事や八さいのみやきり戸のあなたにて父みかどの御こゑを聞
召こは夢かと斗にてなふそれなるはちゝうへ様にてましますかやあらなつかしや父うへさま此戸をあけ
てたひ給へうさやつらさをかたり申さんときりとをたゝきこゑを上あめやさめとぞなき給ふみかど
此由ゑいぶん有やれそれなるは宮なるかこはうらめしのやすかけや我といつ所に置たりとて何程の
事有べしやなさけもしらぬふるまいかなさこそおさなき物として一人すこ/\とくらさんこそよにも
さびしく有べきさ程のとかめも有ましきそ爰をあけて今一度あはせてくれよしゆごの者いか
に/\とせいしにてりうていこがれなき給ふさすかにたけき物のふも御断を聞からにそゝろに袖をう
るをしいかにかた/\宮を御めにかけたりとてさまでのと@めも有ましき餘りに@@けなきふるまい
天道の程おそろしやいざや戸をあけて御めにかけん人々いかにとだんかうすみな一同に尤いわれたりたと
ゑつみにしづむ共君の御ためそのうへさ程のとがにてよもあらじなにかくるしかるへきときりどをあけ
奉れは宮は夢共わきまへすする/\とはしりより父のみかどにいたき付きへ入様にぞなき給ふみかど御@@@
御泪をおさへさせ給ひみやの御ぐしかきなてゝあらくわほうなの次第かなちんははやよはひも@で
にかたふけはくらいをゆづりほつたいほう王とあふがれ御身におもくもてなされくらさん物をと思ひし@@@@
たつらに夢と也た@かなしやといたき付てぞなげかるゝあらいたはしやみやはそもみかどに向何@@@@
(九オ)
のあるしとしあのぼんけの安かげにかやうにせばめられけるなどしよこくのぶし共にりんしをなされ打
給はんかいなやとお@なしやかにの給へはみかど此よし聞召あふおと高し/\やすかけ聞ならば又うきめにや
あふへきにものな申そ我子とて又さめ/\となき給ふかゝる所へ山田の九郎きたり此由を見るよりも
こはいかになんしら何とて此とをひらきいつ所にみかどを置けるなゑゝ天めい付たるやづはらやいち/\切てす
つべきとはつたとにらみする/\とはしりより宮の御てをあらく取あいそふなけに引たつるみかどはすがりた
まひつゝこはなさけなの九郎かなさすか天てるわうしのながれをつくへき此みやを左様にいたすほうや
有いかに/\とせんし有九郎聞てうちわらいあふ十ぜんのくらいか廿せんかはしらす只安かけより外はおそろしき
人もなしはなさせ給へといふまゝにかしこへかつはとつきたをしみやを引たて一まの所へおし入あいのとを
はたとたてばんのやつらくびいち/\にうつてすつへきぞにくきやつがふるまひとあたりをはつたとにらみつ
けしたくへこそは入にける山田の九郎がふるまひあつばれめうがをしらぬぐにんやとみなにくまぬもの
こそなかりけり
四たんめ
▲去程にほつ国へむかはせ給ふまん中おや子の人々は北国事ゆへなくしづまれはくんせいを引くしていとへのぼ
らせ給ひしが其ひはみのゝ国たるいの宿に付給ふかゝる所によりちか中光を御供にて以上十三ぎ来
られしが人/\を御らんしいそき御まへに畏り都にての有様くわしく御物がたり有けれはまん中を初人/\
よこてをうつて是は/\と斗也まん中仰ける様@先こよひは爰にりよしゆくして明日早天に打たて@@
みにうつて上り一時にせうぶをけつせんいかに/\との給へはおの/\ぢんをぞ取にけるさればにや夜のまにかは
(九ウ)
る人心付したがふくんせいとも心の内に思ふ様たのみがたなき事共かなかたきにひゞにぐんぜい付みか
たは次第にせいおとりはか/\しき事あらしされはとて君を見すてやすかげをたのまばこそ国/\へかへり
いかなる山にもとぢこもりさいしをはごくみすぎんとて其夜の内にぐんぜいとも五人三人うちつれてをの
かちり/\成にける五かうの天もひらくれは仲光やくしよ/\にはせまはれど人一人も更になしさてはおち行あ
りけるかとむね打さはぎ大将にかくと申まん中聞召さぞ有らん頼かたなの人心いかゞはいたさんせいはいか程の
こりしぞなか光聞てさん候わづか六十八き敵のせいにくらふれはきう/゛\が一もう大かいのいつてきふせかんとするニ
たよりなし是ぞげんしのめつぼうと仰けれは四天王承りあら御大将共思はざりし御ことば我々はなにの
ためにて候敵廿万三十まんぎより此四人を御たのもしくおぼしめせてにだにあたる物ならば取ては引よせ
太刀のかねこそかぎりなれじこくもうつり候にはや/\うつたちなされよと人/\の御供し都をさしてぞいそ
ぎけるいそけば程なくあふみ成やばせにこそは付給ふそつしに都へ入へからずまつ/\是にしはらく有都
のやうすをうかゞい申さんとと有所に宿を取おの/\ひやうでうかぎりなし中にも頼光@@み出のた
まふはこよひ某つな公時をめしつれまつ/\都にまいりらく中の様子をうかゝいひまだにあらば敵のやかたに
しのび入やすかけを引さげ御めにかけんと事もなげに申けるまん中聞召あらふてきなのらいくわ@@@
さやうにもの事成へき物ならば軍をする迄もあらずとてから/\とわらはせ給ふらいくわう聞召ぜひ@
某あまりふかく成事いたすましむねに覚への候いそき供せよ二人の者つな金時承りあつと
こたへて立けるを定光すへ竹君にすがり扨此二人は御やくにたつましと思召れ御残しなさるゝ@@@
(十オ)
挿絵(十ウ)
挿絵(十一オ)
候からいくわうにつこと打わらいあふ申所しごく也とゞまるも供するも同ちうせつ汝はちゝ上しゆごす
べき時こそうつれとの給ひて二人のもの共引ぐして都をさしてぞいそがるゝかのらいくわうの御所
ぞんぶんふ二道の侍やとかんせぬものこそなかりけれ
五たんめ
▲是はさて置治部の太夫安かげ御まへに山田の九郎を召れやあいかに山田いつ迄みかどをめし
こめおかんされ共かいする物ならは人の思はん所も有こよひひそかにみかとゝ宮を引ぐしてかも川にし
つむべしいかに/\と有けれは承り候と御まへを罷立安かげしばしとをしとゝめ御へんうたがふにあらねど
も一つはなんしがためなるぞけんしをそへんと朝くらうこんをさしそへ給ふ二人御前を罷立其日のくるゝを
今や/\と待にけるすでに其日もくれけれは山田みかどのおはします一ま所にたちより木戸をひらき申様
君すでにこよひ御さいこにて候とく/\出させ給へと云みかど夢共わきまへすこよひかぎりで有けるか.み
やはいかにとせんし有山田聞て同御さいこ候といひもあへず御てを取引出し宮をは下人かかたにかけ.た
いまつもたせうこんもろ共かも川さしてぞいそきけるしかもそのよはきさらぎ廿五日めさすとも
なきやみよに忝も十ぜんのてい王都のつちをふませ給ふ事共は昔も今もためしなしなみだぞ
道のしるべなれ御あしよりもあへるちはたきのおつるかごとく也ひろいかねさせ給ひけるうこん餘りにもつ
たいなく思ひ御前にひさまづき何かくるしくはんへらんかたにかゝらせ給へやとみかどをかたにかけまいらせしづかにろし
をあゆみしはなさけ有てぞ見へにけるかもかはに成しかはと有石のうへにおろし申宮はみかどのそば
によりそも/\いづちへゆかせ給ふぞやみかととかうのへんじもなくなみだにむせばせ給ひける朝倉
(十一ウ)
あまり御いたわしく存みやの御まへにまいり君すでにしやばの御ゑんつきさせ給ひあの浪の
そこにあんらく国と申てめでたき国の候それへりんがうなさるゝ也御ねんぶつと申させ給へと有けれ
ば山田立よりゑゝいらざる御へんのあを道心何のやくにたち申なふ君こそは只今某がてにかけ浪
のそこへふしづけにいたす也よをいなされ候へとあいそうなげに申御てを取引よするみかどしばらくなさけ
なや我々さきへしづめて其後みやをいかにもいたせいかに/\とのせんしにてすがりつかせ給ひけるあさくら見る
にもつたいなくやれなんしそれ程物をしらざるな忝もてい王に左様にあたる天はついかでのがれんあら物しらず
のぐにんかないかなる鳥類ちくるいも物のあはれはしる物をとはつたとにらんで申ける山田聞て心へぬ事ばか
な御身は心かはりかや我をけだ物にたとゆるはいかであくこんのこさんと太刀のつかにてをかくる心へたりと云
まゝにはしりかゝつてむずとくむ山田が下人とびかゝりあさくらに取つきしをゑたりといふてゆんでのあしにて
かも川へけをとし上になり下に也ころり/\ところびけるかゝる所にらいくわう二人の郎等引ぐしてきやうをとを
らせ給ひしが人のくみあふおとを聞わたなべ金時はしりより二人の者をかいつかみうこん二人の物を見るよりも
なふつなきん時にてましますかかやう/\の次第にて候とかたりける公時聞て扨は左様で有けるかとう
こんをはゆるしわたなへ山田をかいつかみ君の御めにかけにけりみかどらいくわうを御らんしやれそれ成はより光かと
する/\とよらせ給ひ初おはりをかたらせ給ふらいくわう聞召扨は左様て候はんいかにわたなへものもしらぬぐ
人めをはからへと仰けるつな承りおのれてんめいしらざるゆへはやくもあたるいんぐわぞとくびねぢ切てすてにけ
り扨らいくわうこしよりやたて取出しそばなる岩に思ふ所ぞんをかき付扨みかどをはわたなへおい奉りきん
(十二オ)
ときは若君をしゆごし奉りやばせをさしてぞいそがれけるあやうきみかどの御いのちたすかり給ふ
御事も是ひとへにらいくわうのゆふりきはつたる故也こゝんぶそうの大将やときせん上下をしなべ
みなかんせぬものこそなかりけり
六たんめ
▲去程に山田の九郎が下人共いそきやかたにはせかへり安かけまへにまいり宮みかどをはらい光御供
仕りおちうせて候があたりの石にかやうにかき付候をうつしてまいり候と御まへにさし出すてつしん書付
うけ取たからかによみ上るそも/\左兵衛のぜうらいくわうみかどをうばいそのうへ山田がくびねぢ切てすつる
也それのみならずそれへおしよせやすかけを初付そうやつばらいち/\つかみひしかんかまへてゆだんいたし候なめん/\いか
にとたからかによみ上たりやすかけ大きにりつふくし扨は大事出来るきやつはらがかやうにいたす上は定てこ
れへおしよせん此うへはなま/\にてはかなはしとくち/\によせて共いつ所にあつめてかたきをふせかんとみなこ
と/゛\くめしあつめやすかけがまへをとへはたへに取まはしよせくる敵を今やおそしと待いたり去程にや
ばせのうらにも爰かしこよりはせあつまり三千よきと聞へけるらいくわうなのめに思召みかた三千き有
うへは敵三十万ぎにおとるまし先此度のせんぢんは四天王いたすへし某はぐんせいわづか引ぐしごちんにひ
かへ有べきぞいかに/\と仰ける四天王共承り我々せんぢんいたさんうへは後ぢん迄も事ならす只四人に
御まかせ候へと事もなげに申上るまん中なゝめに思召あふいさきよし/\このたびのかつせんさぞおもし
ろからんはやうつたてやめん/\とやばせのうらを打立て都をさしてそおしよせける都になれはときのこ
ゑをぞ上にける城にも兼てやういの事なれはきくちのせんじ矢くらに上りなに程の事が有べき
(十二ウ)
あれけちらせとげちす@は我も/\と切て出四天王共是をみててんでにかなぼう引さけ四かく
八めんにひしぎつけ大ぜいのぐん兵をむら/\はつとおつちらすされ共爰にいよの国の住人河のゝあん
平としすけこまのたづなかいくつて一もんしにかけよるをすへ竹つつとはしりより川のを取て大ぢに
入とどうどなげ馬のまへあしおつ取て中に引たてかたにかけけふのとくぶん是也とにつことわらひ
引にけるこゝにつくしちんぜいの住人天のや兵内宗しげとて大力のおのこおどり出て申様たとへ
四天王にてもおはしませ我きう州にてつねにすまふをこのみしに九が国がその内に又てに
たつものなきぞかし此宗しげを打てのち四天王とはなのられよとにくげにぞのゝしりける定みつ
聞てあふやさしき男のことばや出げんざんとはしりよりもろひざ合はたとけまつさか様にはねた
をしのりかゝつてくびを打かれが郎等せんごより三人おり合しを左右のわきにさしはさみ是をはいけて
かへり君のみやげにいたさんとかうげんはいてたちかへるてつしん大かう是をみて是らはよ人かなふまし
いで二つとなき命やすかけに奉らん見物せよや人々と大かう一ぢんにすゝみ出おびたゝしの人々のふ
るまいやどなたにても出給へはれいくさしてなぐさまんとてつぼうをふりまはしにわうだちに立たり
けるきん時みてあふおのれらはだいりにてふかくをかきめんぼく有てたゞ今出て有けるぞとかな
ぼうおつ取うちあひしがよれくまん大かうとおしならべむずとくみかしこへとうどまろび上になり
したになりゑいこゑを出しくみけるがついにきん時うへに也大かうが左右のうでをつかみゆんでゝそば成
がんぜきをゑいと云て引よせその下におし入てかうべ少出たるをわれよくだけよとてつぼうにて打程に
(十三オ)
挿絵(十三ウ)
挿絵(十四オ)
みぢんになつてうせにけりてつしん今はこらへかねそこを引なとかけよるをわたなへすかさすはしり
より是はそれかしうけ取とてつしんとだうどくみしばしねぢあいたりけるがうちか@みにひつかけてか
しこへはたとなげたをしすかさずうへにのりかゝり八つしたのほこ取なをしちのしたよりかたさきへ@@
ざしにつらぬきめよりたかくさしあげ山ざるの木のぼりになられたるとにつことわらつて立たりし
がきくちをはしめしよぐんぜいこはあくまにて有けるとどつとくづれて城中へにげ行を二の木
戸までほつこみけるやすかげかなはしと思ひからめてへおちゆくをらいくわう四天王引ぐしからめ
てへまはりぼつつめひきやうものと高てこてにからめ本ぢんに引かへすごちんにひかへしまん中
かう頓て城へのりかけ給ふらいくわうゑつきかぎりなくいかにやすかげ十ぜんの君をなやました
てまつるむくいの程をしらざるやとくび中にうちおとしきつさきにつらぬき今は心にかゝる
事なしとみかとをうつし奉りいよ/\天下のけんへいまん中ふしにくたされける源氏の御代すへはん
じやうめでたさよとも中/\申斗はなかりけり
右此本者太夫直傳之正本を以テ
令板行者也
大傳馬三町目
うろこがたや新板
(十四ウ)


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