中国人日本語教室学習者の日本語談話におけるフィラーの出現位置 : 外国語環境習得と第二言語環境習得の違いに着目して

冷, 羽涵

阪大日本語研究, 2025, 37, 75-103

アクセス数:61件（2025-06-17 14:26 集計）

固定URL: https://doi.org/10.18910/101121

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タイトル
中国人日本語教室学習者の日本語談話におけるフィラーの出現位置 : 外国語環境習得と第二言語環境習得の違いに着目して
The position of fillers in Japanese discourse by Chinese learners of Japanese in the classroom : Focusing on the differences between second language acquisition and foreign language acquisition
チュウゴクジン　ニホンゴ　キョウシツ　ガクシュウシャ　ノ　ニホンゴ　ダンワ　ニ　オケル　フィラー　ノ　シュツゲン　イチ　ガイコクゴ　カンキョウ　シュウトク　ト　ダイニ　ゲンゴ　カンキョウ　シュウトク　ノ　チガイ　ニ　チャクモク　シテ
著者
著者名
冷, 羽涵 ; Leng, Yuhan
キーワード等
フィラー
出現位置
学習環境
談話能力
ストラテジー能力
抄録
本稿の目的は、外国語としての日本語（JFL）環境と、第二言語としての日本語（JSL）環境にいる中国人教室学習者が使用するフィラーの出現位置や機能がどのように異なるのか、それが学習環境とどう関係するのかを明らかにすることである。学習者と日本語母語話者との自然談話におけるフィラーの出現位置を、「①発話文の冒頭」「②発話文の途中」「③発話文の末尾」「④不明」の4つに分類し、さらに①を「自発的開始部」（自ら発話文を始める際に現れるフィラー）と「返答開始部」（質問に答える際に現れるフィラー）、②を「交替後継続部」（話者交替後、自分の発話文を再開する際に現れるフィラー）と「発話中継続部」（自分の発話文の途中に現れるフィラー）に細分化して調査した。調査の結果、JFLグループの学習者は「①発話文の冒頭」でのフィラー使用が多く、JSLグループの学習者は「②発話文の途中」、その中でも特に「発話中継続部」に偏って使用する傾向が見られた。形式に関しては、JFLグループの学習者は母語のフィラー「呃(eー)」を一貫して使用する一方で、JSLグループの学習者は「返答開始部」で「え(ー)」、それ以外の位置では「なんか」を多く使用し、位置による使い分けが確認された。フィラーの出現位置および形式の違いは、両者の学習環境における自然な日本語との接触機会の差異が談話能力やストラテジー能力に影響を与えた結果であると考えられる。JFLグループの学習者は、自然な日本語との接触機会が限られているため、発話の組み立てや談話継続のスキルが十分に発達していないと考えられる。一方で、JSLグループの学習者は、自然習得環境や教室での豊富な交流を通じて、発話の途中での継続的な談話形成やフィラー形式の使い分けを身につける機会を得ていると考えられる。このことは、日本語接触の質と頻度が、学習者の言語運用能力の発達に重要な役割を果たすことを示唆している。
出版者
大阪大学大学院人文学研究科基盤日本語学講座
Foundational Japanese Linguistics Graduate School of Humanities, Osaka University
収録物名
阪大日本語研究
Handai nihongo kenkyu
巻(号)
37
ページ
75-103
刊行年月
2025-02-28
言語
日本語
ハンドルURL
https://hdl.handle.net/11094/101121
DOI
https://doi.org/10.18910/101121
PISSN
09162135
NCID
AN10106606
アクセス権
open access
出版タイプ
Version of Record
カテゴリ
紀要論文 Departmental Bulletin Paper
阪大日本語研究 / 第37号