紀要論文

紀要論文

text

大阪大学教育学年報. 1996, 1, p. 187-199

日本語

text

1996-03

在日韓国・朝鮮人の紹介は、主として民族的異質性が顕在化している集住地域・エスニック・コミュニティに焦点が当てられてきた。しかし在日韓国・朝鮮入の多くは日本社会に点在する形で生活をしている。そして彼らは民族性を表明することなく、潜在的な存在であるために状況が把握しがたく、顧みられることが少なかった。本稿では筆者の住み込み調査、参与観察、また外国人教育研究機関が行った調査データの分析による集住地域との比較をとおして、「点在地域」の在日韓国・朝鮮人の子どもたちのアイデンティティ状況に焦点を当て、その特質を明らかにすることを試みたものである。その結果彼らのアイデンティティは、日本社会への「同化」といった形で一元的には説明づけることのできない、多様な形相を示すものであり、「非自明性」「マージナル・マン性」の不安定さと可能性をあわせ持っものであると考えられる。従来、在日韓国・朝鮮人の民族的アイデンティティは、「共通の祖先」「同一文化」といった、いわば原初的特性に基づく定義が前提にされてきたが、今後、点在地域に顕著に見られるような、「非自明性」あるいは「マージナル・マン性」に着目し、積極的な意義づけを行っていくことが必要であると考えられる。

10.18910/12085

12085

在日韓国・朝鮮人における地域社会と民族的アイデンティティ : 点在地域の子どものアイデンティティ状況を中心として

金, 泰泳

大阪大学人間科学部教育学研究室

日本語

1996-03

大阪大学教育学年報

1

187

199

https://hdl.handle.net/11094/12085

10.18910/12085

https://doi.org/10.18910/12085