Katayama, Munechika

Shintani, Mototsugu

Tsuruga, Takayuki

nonrivalry

knowledge capital

sticky wages

monetary neutrality

経済成長の研究では、利潤を追求する企業による新しいアイデアの探索と知識の波及は内生的な経済成長の基本的な源泉となりうることがよく知られており、新しいアイデアの生産が経済成長にとって重要な要因であると認識されてきた。一方、景気循環の文献では、研究開発活動が景気循環に対して順循環的でその重要性が示唆されている。しかし、研究開発費の対 GDP 比や研究者の対労働者コスト比が小さいため、標準的な景気循環の文献ではあまり検討されていない。 この欠落に対処するため、本研究ではアイデアの生産と知識資本を明示的に組み入れたニューケインジアン粘着賃金モデルを構築し、アイデアの生産が景気循環、金融ショックに与える影響を考察している。その結果、アイデアの生産関数の形状が金融ショックの実質変数への影響に対して重要な要因になることが明らかになった。1) 研究開発の収益が小さい場合、金融ショックの実質変数への影響に対して、研究活動の定量的影響はあまりない。しかし、2) 研究開発の収益が高い場合、経済において多数を占める労働者の賃金が完全に伸縮的であっても、研究者の賃金が粘着的である限り、金融ショックが実質変数に大きな影響を与える可能性がある。 この結果は、アイデアや知識資本を含む貨幣景気循環モデルを理解する上で、アイデアの生産関数の形状が重要な要因となることを示唆している。Jones（2019a）は、アイデアの生産を含む経済成長理論のサーで、「アイデアの生産関数の形状は依然として興味深い研究対象である」と結論付けている。今回の分析結果は、Jones（2019a）による従来の議論に、貨幣的景気循環モデルの観点から新しい視点を加えている。アイデアの生産関数において、アイデアの生産は「知識資本の蓄積」（standing-on-shoulders効果）と「研究へのリターンの度合い」の二つのパラメータによって決定される。経済成長論では、この「知識資本の蓄積」が経済成長を理解する上で重要な要因として重視されている（Jones, 2005）。これに対して、本研究の粘着賃金モデルは、「知識資本の蓄積」の効果ではなく、「研究開発の収益の度合い」が、金融ショックの実質変数への及効果に対する重要な要因として重視される。

Katayama, Munechika

Shintani, Mototsugu

Tsuruga, Takayuki