紀要論文

紀要論文

text

阪大法学. 2023, 73(1), p. 100-51

日本語

text

2023-05-31

ハンス・ケルゼンは、多くの学的分野において、すなわち法哲学および法社会学と同様に法理論において傑出した業績を有しており、これは国際法と同様に憲法の分野でもそうである。学者としての彼の計り知れない意義は、彼が法実務においても意義深い役割を果たしたことを忘れさせてしまう。本稿は、憲法におけるハンス・ケルゼンの実務活動に着目し、彼が、起草者（Legist）、コンメンタールの執筆者（Kommentator）そして裁判官（Richter）として、どのように活動したかを明らかにする。起草者（Ⅱ．）としての彼は、オーストリア連邦憲法の作成に際してすべてを取り仕切る中心人物だったのであり、これによって政治的決定は適切な形式でもたらされ、政党間の紛争は妥協案によって解決することができた。コンメンタールの執筆者（Ⅲ．）としての彼は、伝統的な司法活動と距離をとって、憲法法律の構造をはっきりさせること、組織上の枠条件を描写すること、手続技術上の進行をくまなく照らすこと、その他には解決のための決定を下すことなしに、解釈についての様々な選択肢を明らかにすることにとどまった。これに対して、憲法裁判所における裁判官（Ⅳ．）としての彼の役割は、完全に異なるものであった。彼は、文言に執着せず、第一義的には体系的かつ目的論的に論拠づけを行ったのであり、また彼は自らの判事としての役割を、新興の民主制を擁護しそしてそれを促進するよう努める政治的職務と理解していた。最後に（Ⅴ．）本稿は、ハンス・ケルゼンの実務上の働きが彼の法理論上の業績をどのように豊かにしたのかを取り上げる。

10.18910/91514

91514

＜翻訳＞憲法実務家としてのハンス・ケルゼン

大阪大学法学会

日本語

2023-05-31

阪大法学

73

1

100

51

https://hdl.handle.net/11094/91514

10.18910/91514

https://doi.org/10.18910/91514