紀要論文

紀要論文

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年報人間科学. 1994, 15, p. 163-174

Philippine Democracy : A Form of Resistance against the Common Good?

Kajiwara, Kageaki

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1994

フィリピンは独立以来、アジアにおける合衆国流民主主義の「ショーケース」の名をもっぱらにしてきた。現在でも多くのフィリピン人は、それが合衆国による「善意にあふれた」植民地政策の帰結であると考え、民主主義はアジア諸国のなかでフィリピンをきわ立たせる国家的アイデンティティの主要素であるとみなすことが多い。こうした通説にもかかわらず、あるいは制度的な民主主義の移植は認めるとしても、フィリピンにおける民主主義のさらなる達成には、社会・経済的にも、文化の面からも困難が山積している。現実に選挙が行われる反面、政治的暴力や社会的な格差と不平等は容易には解消されない。むしろ植民地時代から続くそうした格差は、移植による民主主義を、植民者と植民地化された側のエリート層が占有した結果、解消されずに永続化したとも考えられる。　本稿の目的は、近代の「善なる」価値のひとつの体現といってもよい制度、思想が、植民地状況という文化接触を経て、必ずしも望ましくはないものへ変貌してゆく過程を分析することにある。植民者と被植民者の接点には、表向きには(そして実際にも少なからず)宥和的な接点が形成され、その接点を共通領域にして、そこで接触のコミュニケーションが生起する。民主主義はそうした領域のなかで、外国の支配者にとっては文明による支配を正当化する象徴として、被支配者にとっては文明化への希求の証しとして、それぞれの意図に沿った、似かよってしかも異なる機能を果したのである。

10.18910/9587

9587

Philippine Democracy : A Form of Resistance against the Common Good?

Kajiwara, Kageaki

大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

1994

年報人間科学

15

163

174

https://hdl.handle.net/11094/9587

10.18910/9587

https://doi.org/10.18910/9587