紀要論文

紀要論文

text

年報人間科学. 2003, 24-2, p. 215-231

text

2003

1999年9月21日台湾の中部で、震度7以上の地震が発生した。その地震が悲惨な災害を起こし、台湾に大きな打撃を与えた。1995年1月17日早朝、日本で阪神大震災がおきた。その大震災が激甚な被害を日本に与え、そして数千人の命を奪い、数多くの負傷者を出した。災害研究の一環として、情報伝達の研究が必要不可欠である。そこで、本文では、情報伝達の部分に着目し、すなわち災害時の情報伝達はどのようにされるかということについて論じるつもりである。以上のことに基づいて、この論文では、阪神大震災と台湾大地震の例を通して、以下のことを考察する。まず、災害情報とは何なのか、すなわち、災害情報の種類ないし災害情報の内容にはどんなものがあるのかを紹介する。次に、災害が起こった場合、情報が必要とされるが、阪神大震災と台湾大地震の例から、必要とされる情報が迅速に伝わらなかったのはなぜなのかを考えていく。つまり、情報伝達の過程でどのような問題が生じてくるのかを明らかにしたい。最後に、情報の流れに何か変化があるのではないかを考えていきたい。以上のことに答えるため、この論文では以下のことに着目する。まず、災害情報は災害に限って伝えられるものだけではない。平常時にも常に災害情報を伝えなければならない。情報を伝えることによって、人々は災害の知識を身に付けることができ、災害の時に自分を守ることができる。次に、情報伝達の問題は、下向(top down)的情報伝達だけに集中しがちである。こうした情報の流れは、平時にはうまく機能できるが、災害が起きると、問題が起こる。阪神大震災と台湾921大地震の事例から、なぜ災害時に情報がうまく伝わらなかったのか。非人為的要因(情報機器の破損など)と人為的要因(意思決定の遅れ、意思決定のあやまちなど)との二つの側面から述べる。さらに人為的要因がより大きな問題を引き起こしたことに注目する。最後に、近年の災害の場で、.ボランティアと情報ボランティアの例をあげて、情報の流れの変化を考えていく。つまり、二回の震災で人々の注目を集めたボランティアと情報ボランティアが使う方法、情報伝達分方法を紹介する。

10.18910/8964

8964

災害における情報伝達と情報伝達の問題 : 阪神大震災と台湾921大地震を例として

洪, 國財

大阪大学大学院人間科学研究科社会学・人間学・人類学研究室

2003

年報人間科学

24-2

215

231

https://hdl.handle.net/11094/8964

10.18910/8964

https://doi.org/10.18910/8964