departmental bulletin paper

Departmental Bulletin Paper

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臨床哲学ニューズレター. 2022, 4, p. 181-195

Japanese

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2022-03-01

【臨床哲学の書きもの】

鷲田清一の提唱する臨床哲学は、聴くことの力を重視し、〈臨床〉を、ある他者の前に身を置くことによって他者を迎え入れ、注意ぶかく他者のことばを受けとり、じぶん自身もまた変えられる経験である、と考えた。しかし、わたしたちが実践する対話の経験が教えてくれたのは、聴くことは単数ではなく、聴く・語るが交代する複数での共同の行い、聴きあいと語りあいのもつ意味と豊かさである。聴くこと、待つことの受動性からは、ひとびとが声をだし、語る主体となる変容は生まれない。異なる声でともに語り、ともにかんがえ、ともに変わる実践としてのフェミニズムは、見えないものから見えるのものへ、沈黙から声へ、客体から語る主体へ、と変容することを重視してきた。ここに、苦しみの受動性に耽溺するのではなく、状況をともに生き延びる友（philia, friendship）と知恵（sophia, wisdom）のつながり、つまり “philosophia”が生まれる。オードリー・ロードやアドリエンヌ・リッチは、人種、民族、階級、性、性別というさまざまなちがいを横断しつつ、詩を書き、うたうこと、つまり沈黙が声と行動に変わることを強調する。それまで声をあげられなかった、さまざまなひとびとが、表現行為に参加することで、世界の光景は変わっていく。フィロソフィは、対話の実践であるとともに、書く実践 さまざまな媒体を通して創造的に書く営みである。多様で創造的な表現行為へとひとびとを誘い、声と意味の探究をつづけていくことが、〈臨床〉とフェミニズムと哲学実践が交差する「フェミニズム臨床哲学」となる。

10.18910/86375

86375

フェミニズム臨床哲学とクリエイティヴ・ライティング

ほんま, なほ

大阪大学大学院文学研究科臨床哲学研究室

Japanese

2022-03-01

臨床哲学ニューズレター

4

181

195

https://hdl.handle.net/11094/86375

10.18910/86375

https://doi.org/10.18910/86375